Netflixにて漁港の肉子ちゃんが初公開となりました。
この作品は明⽯家さんまさんが⻄加奈⼦の⼩説に惚れ込み、さんまのまんまの番組内でアプローチした事が発端で映画化となりました。映画公開から話題となり第46回報知映画賞のアニメ作品賞や第45回日本アカデミー賞 優秀アニメーション作品賞を受賞致しました。しかし、興行収入としては伸び悩み、原作良し、話題性良し、制作会社良しの三拍子を生かしきれなかったのでしょうか。
記事の目次
あらすじ (2.5 / 5)
太っていて不細工だが、とても明るい肉子ちゃんは、男にだまされフラれるたびに住む場所を転々と変えながらもひたむきに生き抜いてきた。書き置きを残して蒸発した男を追いかけて、瘦せっぽっちの幼い娘キクりんと北の小さな漁港にたどり着いた肉子ちゃんは、そこで焼き肉屋「うをがし」の店主サッサンと出会った。妻に先立たれ、子供もおらず、孤独に絶望して店を畳もうとしていたサッサンは、キクりんを連れて現れた肉子ちゃんを見て「肉の神様が現れた」と思い込み、「うをがし」に雇い入れて”お腹を壊さないこと”を条件に、所有する小さな漁船に安く住まわせることにした。こうして始まったこの小さな町での母娘二人の暮らしは、当初は大変なこともあったものの、3年経った今では毎日賑やかに楽しく暮らしていた。しかし、11歳となって思春期を迎えたキクりんは、友人たちとの関係や肉子ちゃんとの不安定な暮らしに頭を悩ませるようになっていた
引用元 ウィキペディア
西加奈子さんの作品は多少は拝読させていただいてますが、「漁港の肉子ちゃん」は読んでない状況で映画を見ました。なのでどれくらい脚本修正されているかは分かりません。
率直な感想として映画のメインテーマとして挙げている「みんな望まれて産まれてきたんやで」や「ゆっくり家族になっていく」という部分が映画のストーリーとリンクしにくく、ラストで強引にリンクさせてると感じてしまいました。その理由は96分という上映時間内で描ききれなかった部分が多かったのではないかと推測します。かと言って96分という時間は長いかというとむしろちょうど良かったとも思います。削れる部分があったとしたら「コメディ要素」ではないでしょうか?吉本興業さんが製作として携わっているので欠かせない部分ですが中途半端なコメディ要素よりもハートフルな要素に注力した方がまとまりが良かったと思います。
この時間制限の枠の中でいかに情報を多く詰めるのかの壁を乗り越える為か、全編を通して「過去の回想」と「主人公キクリンの心の声のセリフ」が多くを占めます。それを「感動を誘う名言」で肉子ちゃんやサッさんが定期的にまとめる。忘れた頃に無理やりにコテコテのお笑い要素もいれる。と構図で物語が進行。
筆者が感じた最終的な映画のメインテーマは「古き良き日本」。つまり昭和の日本を知らない子供がみるとよくわからず、ターゲット層が掴めない脚本に仕上がってます。
詳細&キャスト (5 / 5)
- 監督:渡辺歩
- 原作:西加奈子
- 脚本:大島里美
- 企画プロデュース:明石家さんま
- 出演:大竹しのぶ COCOMI 花江夏樹 中村育二
- ジャンル:ハートフルコメディ
- 上映時間: 96分
- 制作年: 2021年
- 制作会社:STUDIO4℃
話題性として明石家さんまさんの名前があり、原作は大人気作家の西加奈子さん。35万部を売り上げており、監督は『ドラえもんのび太の恐⻯2006』や『海獣の⼦供』で知られる渡辺歩。製作は「海獣の子供」や「メモリーズ」で知られる日本を代表するアニメーター集団のSTUDIO4℃。楽曲を見てもメイン曲を作詞作曲吉田拓郎さんが作った名曲「イメージの詩」。エンディングはGReeeeNが務める。
全てにおいてキャストは完璧でこのラインナップを見ているだけで「どんな映画になるのだろう」とウキウキしますね。
ちなみに筆者が映画を見終わった感想として評価しているのは大竹しのぶさんの声優力です。とてもスムーズに心に届く声と演技力でした。逆に子供達の声が(特に二宮くんというキャラ)の声が年齢とあってなさ過ぎて違和感を感じます。「子供」と「大人」という区分けを表現している部分もある映画なので子供は子供らしい声が望ましかったとは思います。
感想&評価 (3.5 / 5)
感想としては「見て良かった映画」だと思います。映画としての完成度はかなり粗が目立つと感じますが、細かい部分を見るのではなく「感覚」で見る映画だと思います。これはもともとの原作力とSTUDIO4℃の表現力の素晴らしさによる強引な力業だったのでしょう。この二点で押し切らないとネガティブ要素しか残らなかったと思います。
評価として良かった点、気になった点をあげると
- 良かった点
- 吉田拓郎さんの曲が素敵
- 発達障害に触れる要素。
- 大竹しのぶさんの演技
- 原作が読みたくなる
- ちょうど良い映画時間
- 気になる点
- 肉子さんのキャラ表現が魔神ブーと被りすぎる。
- 主人公が本を好きな要素が「独り言部分」にしか生かされてない。
- 何で謎少年はイケメンにする風潮があるのかわからない。声も大人すぎる。
- バス停トトロや漁港のポニョ感や海の海獣っぽさなど評価された作品に表現を寄せがち。
- タブレット搭載の案内ロボットが出てくるのに昭和50年台の雰囲気だったり、加湿器や若者のファッションは現代なのに街は昭和だったりと時代背景がバラバラすぎる(携帯は二つ折り)。
- 運動会も酔っ払った大人が登場したり、飲み物もペットボトルではなく缶ジュースで昭和を表現しているが現代風の体操着。そして普通に薄型テレビが出てくる。
- 食べ物の描写が非常に多いがあまり美味しそうには見えない。宮崎映画を意識しすぎ。
- 田舎町なのにマリアちゃんの家が花輪くん並みにでかい洋式屋敷。
- 動物の声の代弁の必要性がわからない。
まとめ
いろんな要素を詰め込みすぎて本来の原作の良さを表現しきれなかったのではないかと思います。
そして、評判が良かったアニメの要素(特に宮崎さんや細田さん)を引用しすぎな気もします。つまりキャスティング同様にヒットさせる事に力を入れすぎたのか映画としての個性を感じません。
雰囲気を楽しむと決めて見るととても幸せな映画です。深く考えたくない人にはおすすめですよ。